コンクリートで囲まれた箱がどのように外気に接しているのかで、その住まいの風通しの善し悪しは九割がた決まってしまう。中の間取りで工夫できるのは、せいぜい残りの一割程度である。プライバシーの確保という、住まいとしての基本的な要件についても同じことがいえる。各住戸が一つの独立した箱として外部廊下や前面道路、隣接住戸といった外部環境からいかに隔離されているかをチェックしないで、サッシや床のフローリングの遮音性能だけを議論してもしかたがない。また、自分の家の玄関にたどり着くために毎日通ることになるエレベーターや外部廊下、外階段といったアプローチ上の各場所の雰囲気を把握しようとつとめることも重要だ。いざ住み始めてみれば、自分の家の玄関先までが楽しいか楽しくないかで、我が家の価値には格段の差が出てしまうことなど誰でも実感できる。夜の外部廊下は、後ろを振り向くこともできずに思わず駆け出したくなるような、うら寂しい雰囲気を醸し出していて、昼間は昼間で自分の家の玄関先が、懐中電灯で照らさないことには表札の文字も確認できないほど暗いのであれば、いくらマンション全体の入り口であるエントランスホールの豪華さだけを強調されても、もはや問題外だろう。