世界の人工心臓研究をリードしている人工臓器研究所

2012-02-05

病院の外来受診者は年間七十万人、入院患者は三万人を超える。開胸心臓手術の件数が三千件(毎日数例)に及んでいることからもわかるように、心臓病治療を中心にした、いわゆる先端高度医療を行なっている。医療内容に見合い、医療費もかなりの高額だ。近隣からの患者は全体の三割にすぎず、全米各地、世界各国から心臓病治療を受けるために訪れる患者の数のほうがずっと多い。石油で得たお金で来たのだろうか、アラブの民族衣裳を身にまとった患者の姿が目立つ。このキャンパスの南側の一角に、世界の人工心臓研究をリードしている人工臓器研究所(所員七十人)がある。N医師は先代の博士の跡を継ぐかっこうで一九六八年以来二十年以上にわたって、ここの研究所長を務めている。病院の広さ豪華さに比べ、研究所はいかにも手狭である。各部屋を結ぶ廊下は迷路のように入り組んでいて、目的の部屋まで間違えず行くには、少々慣れが必要だ。また、地上の建物なのになぜか窓がなく、所内に入ると地下室のような印象を受ける。ただ、ダウンタウンのたたずまいのような、うらさみしさ暗さはない。スタッフの動きは活発で、それぞれの研究に熱心に取り組んでいるたしかな息づかいが感じられるからだろう。英語と日本語、ときには中国語も耳に入ってくる。インターナショナルな雰囲気だ。研究所ではN医師の総指揮のもと、「人工心臓」、「代謝・免疫」、「生体材料・生体適合性」、「人工神経」の四つのプロジェクトに分かれ、人工臓器全般についてさまざまな研究が行なわれている。なかでも力を入れているのが完全埋め込み型の人工心臓の開発である。このプロジェクトは、一九九四年までに実際に臨床使用の可能な人工心臓を完成させる。そのために、NIH(米国立衛生研究所)が年間一億ドルの研究費を出すというものだ。ここクリーブランド以外にも三つの研究施設が参加し、開発にしのぎをけずっている。